クラウドではじめるデータマネジメント
データマネジメントを統制し、改善と価値創出をサポートする
データガバナンス
データマネジメントを統制し、改善と価値創出をサポートするデータガバナンス
本コンテンツは、当社が執筆している日経クロステック記事「実践DX、クラウドで始めるデータマネジメント 第14回「データ活用の広がりで注目のデータガバナンス、マネジメントの「統制」を担当」の内容を一部要約しつつ独自コンテンツを加えたものです。日経クロステック記事の全文はこちらをご覧ください。
本記事では、データガバナンスの基礎知識について説明します。データガバナンスは、データマネジメント業務の統制を担う活動で、その成果に大きな影響を与えます。データガバナンスの導入順番や、効果を高めるためのアプローチなど、データガバナンスの取り組み方についてに詳しく解説。その理解を深め、自社に合った導入方法の検討に役立ちます。
データガバナンスの基礎知識と取り組み方
「データガバナンス」は特殊な位置を占めます。データガバナンス以外のデータマネジメント領域は、業務の実行を担うのに対して、データガバナンスは業務の統制をする役割を担います。具体的には、データマネジメント業務を管理する体制、ポリシー、手順を整備するプロセスとその統制業務を指します。
データガバナンスの重要性が高まっている背景には、データ活用の拡大とデジタルトランスフォーメーション(DX)の推進があり、多くの従業員が様々なデータを活用し始めると、その利用を適切に管理する必要が出てきます。データガバナンスにより正しく統制できないと、複数の事業部門が同じようなデータ分析システムを独自に構築して重複投資が発生したり、データ設計の不統一がデータの統合や分析に余計なコストを生むなどの弊害が起こります。
データ活用で発生する課題に対処し、未然に防ぐことがデータガバナンスの主な目的です。企業全体での安全かつ効率的なデータ利用を実現するために、統制の方針や規則を定め、データの組織横断的な管理を行います。目標は、データ利用の効果を最大化しながら、潜在的な問題を最小限に抑えること。ただし、データ利用の柔軟性を過度に制限したり、運用コストを不必要に増加させるような管理は、データガバナンスの目的に反することとなるため、注意が必要です。
データガバナンスはいつ、どんな順番で取り組むべき?
「データの民主化」を目指し、自由なデータ利用を促進する企業と、規制が厳しい業界で法令を遵守しつつセキュリティを最優先にデータを活用する企業とでは、データガバナンスへのアプローチが異なります。普遍的なデータガバナンスの形式があるわけではなく、各企業の企業文化やデータ管理に対する姿勢に基づいてアプローチを検討する必要があります。
データガバナンスの導入時期についても注意深い検討が必要です。これには、データマネジメントの各領域間の関係性を示すDMBOK(Data Management Body of Knowledge)のフレームワークが役立ちます。このフレームワークを階層構造化し、いつデータガバナンスに取り組むべきかを示唆しているのが次の図です。
データガバナンスはデータ活用を進めてから、段階的に行う
DAMA-International(DMBOKを策定した国際的なデータ専門家で組織された非営利団)の会長を務めたPeter Aiken氏は、上記の図には2つの重要な考え方を含めていると考えられます。
1点目は、データガバナンスに取り組むべきタイミングは、データ利用が進んだ後であるという点です。つまり、組織はデータ活用の初期段階ではなく、データ利用が進み統制の必要性が高まった時点でデータガバナンスの取り組みを開始すべきだという考え方です。
2点目は、データガバナンスはデータマネジメントの全体を支える基盤となる機能であるということです。データマネジメントの各業務をどのように計画し、進めるべきかについての指針を提供し、その実施をサポートする役割を担います。
データガバナンスは本質的に「統制」が目的のため、トップダウンで進められることが一般的です。理想的には、データガバナンスの戦略や方針を初期に策定し、その基盤の上でデータマネジメントの各業務を計画的に実行したいでしょう。しかしながら、実際にはデータの利用には試行錯誤が伴うため、最初から統制が必要な場面をすべて予測することは困難です。したがって多くの企業では、データ利用を経て具体的な成果を得た後に必要な統制の要素を見極めて、段階的にデータガバナンスにの取り組むという方法が現実的です。セキュリティやコンプライアンス関連の基本的なルールから始めて、徐々に対象範囲を拡大していくアプローチが多くの企業にフィットしやすいでしょう。
データガバナンスを効果的に進めるアプローチとは?
データガバナンスを効果的に進めるための段階的アプローチについて、そのステップと内容を説明します。
1. 現状分析
最初のステップは、現在のデータ管理状況を調査することです。データ利用における既存の課題やリスクを特定し、その原因を分析します。将来的なリスクも予測して整理することが重要になります。この分析結果を反映することで、データガバナンスの取り組みが現実の問題解決につながります。第2回で説明している「データマネジメントの成熟度モデル」を用いて現状把握することを推奨します。
2. 戦略と施策の策定
次に、データガバナンスの目標とそれを達成するための戦略や施策を策定します。目標に到達するために、効率的かつ効果的な方法による施策を考案します。全ての課題を一度に解決しようとするのではなく、優先順位をつけて重点を置くべき問題に集中します。また、実際に施策を試みることで、理論上では見えなかった課題や改善点が明らかになるため、PoC(概念実証)などを通じた実験も重要です。
3. ルールと標準の作成と定着
データガバナンスのポリシー、管理ルール、設計方式、プロセスの標準などを具体化し、作成します。これらが実際の業務プロセスに組み込まれ、日常的に遵守されるようフォローアップとサポートが不可欠です。実行には予想以上の労力が必要となることがあり、適宜、計画の修正も検討します。
4. モニタリングとフィードバック
データガバナンスの取り組みが定着した後も、その効果を継続的に監視し、必要に応じて微調整を行います。セキュリティーやコンプライアンス違反の早期発見と対応、プロセスの改善を行います。効率的なモニタリングを実現するために、クラウドサービスなどの技術を活用することが有効です。
これらのステップを繰り返し実行することで、データガバナンスの成熟度が上がり、データ活用を妨げるデータマネジメント上の問題が発生しにくくなります。データガバナンスの取り組みは、組織内でのデータマネジメント活動を改善し、データ活用を通じた価値創出を促進するための重要なプロセスです。
データガバナンス分野でもクラウドの活用が進んでおり、データガバナンスの効果的、効率的な実行をサポートするようなクラウドサービスが出てきています。データガバナンス領域のクラウドサービスはまだ新しく、今後の充実が期待されます。クラウドサービスの活用例については日経クロステック記事で説明していますので、ご興味のある方はご覧いただければと思います。今後、データガバナンスに利用できるクラウドサービスの紹介に焦点を当てた記事も掲載します。
次回のテーマは「データセキュリティー」です。データの安全性を維持・管理する業務で、データを安全に活用するために必須の業務です。変化するデータ活用のためのデータ基盤で、データセキュリティを効果的に保つ実行ポイントについて解説します。